「一子相伝(いっしそうでん)」を超える!

「一子相伝(いっしそうでん)」を超える!

一子相伝(いっしそうでん)とは、学問や技芸などの師が、その奥義、秘法、本質を自分の子供のうち1人にだけ伝え、他の者には秘密にする事とあります。
勿論、実子だけとは限りませんが限られた人にだけ伝えて伝統を守りという意味なのでしょうね。
複数の弟子に伝えると、「自分のが一番師匠に近い」という主張も起こり正しく継承されないのでしょうね。
これも実話ですが、私の脳裏から離れることのないストーリーでした。

今から20年程前にいつも通っていた寿司屋さんの大将から直接聞いた話です。
その大将は、独立の際に周りの複数の寿司屋さんから出店の反対を受け、どうしても開店するのなら我々の価格よりも高くして営業してくれと頼まれたそうです。
それだけ実力も高く評価されていて出店は脅威だったようです。
その大将の小僧時代の師匠は「一子相伝」の対象は実子と決めていたので、「名店の味」を一弟子が詳細に教えを受ける事は出来なかったと言っていました。

特にその名店の「穴子は絶品」だったそうですが、仕込みは弟子に見られないようにしていたようです。
覚えたくてもどうしても仕込みを教えてもらえない・・
そこで師匠の穴子の仕込みを、動作や5感から受ける情報すべてに神経を集中した毎日を過ごしていたようです。
穴子の香りや炊く時間などあらゆる情報にアンテナを建て少しづつ自分のモノにして最後には、自分で「超えた!」という実感を持ったそうです。
そして独立へ・・・


その大将は、寿司を握りながら昔に戻ったように笑顔で語ってくれました。
臨場感に溢れた有意義な時間でした。
廃業時には、私に開店時から使っている「寿司桶」を「宜しかったら家でお使い頂きませんか?」と幾つか頂きました。
私は、寿司屋のカウンターでたくさんの事を学びました。
寿司屋は、私にとって「人生塾」です。